はじまり
今日は、この前読んだこの本を紹介するぜ。
ほ〜、どれどれ?
大まかな書籍の流れ
目次としては、こんな流れです。
- ゲーミフィケーションの最終目的は、動機づけである
- プレイヤーにやりがいを与える
- ゲーミフィケーションで行動を変える
- ゲーミフィケーションでスキルを習得する
- ゲーミフィケーションでイノベーションを促進する
- プレイヤー中心のデザインとは
- ゲーミフィケーションをデザインする
- ゲーミフィケーションデザインによくある失敗
- ゲーミフィケーションプロジェクトを成功させる
- ゲーミフィケーションが未来を変える――2020年の展望
ゲーミフィケーションとは
まず、「ゲーミフィケーション」というのは、「ゲームメカニクスおよび体験デザインを駆使し、人々が自身の目標を達成できるよう、デジタル技術を利用してやる気にさせ、動機づけることである」そうです。
「ゲームメカニクスおよび体験デザインを駆使」する方法としては、ポイント、レベル、インタラクティブ(SNSみたいな機能)な機能を実装することなどが挙げられます。
また、この「動機づける」というのがポイントで、感情レベルでやる気にさせることがゲーミフィケーションの意義だそうです。そして、会社の営業担当が契約数を基にインセンティブ報酬を付与するシステムを巷でよく聞きますが、そういう類の取り組みはゲーミフィケーションではないそうです。
なぜかと言うと、目標に対して対価を支払うものは「感情型エンゲージメント」ではなく「取引型エンゲージメント」であるためです。まず、「感情型エンゲージメント」とは何かと言うと、エンゲージメントを獲得した人に、「内的な」モチベーションを発生させるエンゲージメントのことです。
さらに、「内的な」モチベーションというものは、以下の3つの要素を持っています。
- 自律性(Autonomy):自分の人生を自ら導きたいという欲求
- 熟達(Mastery):自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動
- 目的(Purpose):自分の利益を超えたなにか大きなもののために働きたいという憧れ
これらの「内的な」モチベーションの要素を持っていないモチベーションを「外的な」モチベーションと呼び、「外的な」モチベーションしか発生させない「取引型エンゲージメント」を支払う取り組みはゲーミフィケーションではないということです。
抽象的な話が続いたので、先程の営業のインセンティブを例に話してみると、インセンティブというエンゲージメントを支払った場合、以下の考え方により、内的ではない外的なモチベーションを発生させる「取引型エンゲージメント」を支払っていると考えられます。
- 自律性(Autonomy)→ 他人から貰うインセンティブが原動力となってしまっている。
- 熟達(Mastery)→ 衝動の向かう先がインセンティブになってしまっている。
- 目的(Purpose)→ 目的がインセンティブになってしまっている。
このことから、ゲーミフィケーションを受けた人は、自ら目的を設定して、その目的までに熟達していることを意識することが出来るようになる必要があるわけです。
ゲーミフィケーションは、TVゲームとかコンピュータゲームとは違う?
この考え方で言うと、ゲーミフィケーションは、それらのゲームとは異なるものだと思われます。本書でも異なるものだと書かれています。
ゲーミフィケーションというのは、ゲーミフィケーションの先の目的に向かって進んでいけるように、プレイヤーをサポートする役割ですが、コンピュータゲームなどになると、コンピュータゲームを遊ぶことが目的となっているので、ゲーミフィケーションとは主眼が異なります。
ゲーミフィケーションと同様に、ポイント、レベルやランクなどのシステムがあるゲームもありますが、それらの目的はゲームをクリアしていくことになるので、本質的には違うのです。
ゲーミフィケーションから提供され得るサービス
ゲーミフィケーションの大目的は、「プレイヤー自らの目的を達成する」ことにあります。その目的を達成するためにサポート機能は以下が挙げられます。
- 目標を設定する
- その目標のマイルストーンを設定する
- トリガーを設定する
- 仲間を見つけて、やり取りさせる
- 徐々に複雑で難解なものに取り組ませる
- 反復させる
- 達成したらバッジなどを付与する
- 達成状況などを記録してプレイヤーに可視化したデータを提供する
本書では、Adobeが「3ds Max」というソフトに関して抱えていた課題を、そのソフトのチュートリアルや体験版にゲーミフィケーションを取り入れたことにより、解決したことが挙げられていました。
3ds Maxでは、ユーザーの知識不足により、製品の使用者数が増えないという課題がありました。そこで上に挙げたようなゲーミフィケーションを取り入れたら、製品のダウンロード数を10%、体験版の利用者数を40%増やすことに成功したそうです。
ゲーミフィケーションをデザインするために
本書では、このゲーミフィケーションをデザイン・設計するためのアドバイスを記載されていました。
まず、大事なのは、そのゲーミフィケーションのプレイヤーのペルソナを十分に想定することです。本書に書かれていたペルソナ設定の1つを紹介しましょう。(ヤックトレードというサービスの対象者の特徴をまとめたものらしいです。)
ダニエルは36歳。独身で高収入の建築家だ。引退後に備えて貯蓄をしている。保有株のポートフォリオの大半が、優良株と米国の上場企業を対象とする投資信託だ。投資は長期的な支店から分析的に行っており、短期的な売り買いはしない。相対的に見て、株式市場それ自体が投資の唯一のリスクだと言える。ポートフォリオは堅実で、順調に利益を出している。ダニエルは薬価―に登録しており、質問への回答者としてポートフォリオのバランスのとり方を説明したことが何度かあるが、その時間に見合う対価があったようには思えない。余暇には建築の専門知識を活かし、地域づくり協議会のボランティアとして、市内の貧困地区の空き地や空きビルを市民の憩いの場に変える活動をしている。
こうしたペルソナを十分に作り上げることで、どのようなゲーミフィケーションがプレイヤーに対して効果的な感情型エンゲージメントを与えられるかを精査することが出来ます。
次の取り組みは、プレイヤー目標を定義することです。以下が例として挙げられていました。
- 複数プレイヤー/単独プレイヤー:インタラクションのスコープはどうするべきか。
- 単発型/継続型:目的がすぐに完結するものなのか、継続的に取り組む必要があるものなのか。
- 創発的/計画的:どちらのゲームプレイが向いているか。
これらの例のどちら側にあるサービスなのかを評価して、プレイヤー目標を定義します。そして、その目標をサポートする手段は、前項で紹介した内容となるわけです。
ゲーミフィケーションを踏襲しているサービスの例
以下に、ゲーミフィケーション的な取り組みをしているサービスの例を紹介します。
- AniList
- Last.fm
- 読書メーター
- SalesforceのTrailhead
- プログラムのテストツール
AniLIst
AniListとは、自分が今までに視聴したアニメや読んだマンガ・ラノベなどをAniLIstデータベースに登録して、自分がどれほどの作品を楽しんできたかが可視化出来るサービスです。自分がどれほど暇を持て余した人間なのかが一目瞭然となるサービスです。
これは、2022/4/4時点の僕のAniLIstのアカウントの画面ですが、このように自分が今までに見聞きしたアニメとマンガのタイトル数や話数の総計を可視化出来るサービスなのです。
アニメのジャンル分けやSNS的な側面も併せ持っています。これで他の人が見たアニメやそのジャンルから、アニメを見る動機づけやさらなるユーザーとの繋がりも期待できます。
Stats画面を出せば、自分が今まで採点したアニメをヒストグラムとして表示させることも出来ます。
Last.fm
Last.fmとは、自分が今までに聞いた音楽のメタ情報をLast.fmのデータベース上に登録して、あれこれ振り返られるサービスです。
僕は、自分のAndroidにLast.fmアプリを入れて、Pulsarというプレイヤーで流している曲をScrobble(Last.fmに記録すること)しています。
これは、2022/4/23時点の僕のLast.fmのアカウントの画面ですが、今週を先週と比較してどれぐらい音楽を聴いたかどうかを可視化してくれます。先週に沢山聴いて、今週はあまり聴かなかったので、88%も数値が下がっていますね・・・(笑)
この表示部分は、今週どれぐらい新しいアーティスト、アルバムを仕入れたかどうかや、聴いた曲のジャンルの移り変わりが可視化されています。
4/1週は、Dance Hallのジャンルをたくさん聞いていたのですよね・・・。Apple Musicを一旦退会して、聞けていないのですが、もう一回始めてみようかな?
読書メーター
読書メーターは、自分が今までに読んだ書籍を記録できるサービスです。
読んだ本の感想を書けば、それが別の読書メーターユーザーに読まれることでいいね!を貰えたりもします。そこから、自分と似たジャンルを読む読書仲間が増えていく感じですね。
自分のトップページには、読書ページ数と読書冊数が積み上げヒストグラムで蓄積されていきます。著者の割合なども表示されます。小説をよく読む方とかは、自分の趣向を分かりやすく表明できるのではないでしょうか。
SalesforceのTrailhead
Trailheadとは、Salesforceで利用できるサービスなどを勉強できるサービスです。
例えば、学習コースごとの解説を読んで、最後の設問にすべて正解すると・・・、
こんな風なバッジが貰えます。
このバッジはTrailheadの管理画面で確認できて、もっとバッジを貰えばどんどん増えていって、ランクが上がっていったりします。
プログラムのテストツール
僕は、テストツールを使っている時にゲーミフィケーション的な感覚を持ちながら、テストコードを書いています。
以下のメッセージは、Pythonのテストツールであるpytestのものですが、この「passed」の数が増えていくのが楽しいのです。どんどんコードを書いて数字を増やしたくなってくるのです。
確かにテストコードは最低限の数で行うほうが望ましいですが、このテストケース数の可視化がモチベーションの向上に寄与してくれるのは事実です。
ケース数やカバレッジが増えると、苗が育ったり花が咲いたりするように出力されたら、もっと楽しいかもしれませんね。
ITSM City
このゲーミフィケーションは、本書でも紹介されていました。
仕組みとしては、ITシステムを運用している際に、そのシステムのインシデントが増えていくと、画面の中の車がドンドン渋滞していくというものになっています。
個人的な印象としては、面白そうだという印象を受けました。
システムのインシデントが増えていくと焦りが生まれてくるものなのですが、ある一定のところを超えると逆に楽しくなってきたりするものでもあります(笑)そのため、画面を見ていて、車が一気に増えていたり、だんだん減っていったりするのが見えるというのは、楽しそうです。
おしまい
こんな感じですわ。
なんかサービスを作る時に参考になりそうですな。
以上になります!
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